No.27 Portfolio Optimization with Excel part.1
今回は、またまた、テーマを変えて、金融ポートフォリオの最適化をやってみたいと思います。
まずは、Excelでトライします。
今、読んでいる本が、以下の「ザ・クォンツ 世界経済を破壊した天才たち」なんですが、
ポートフォリオ理論の話が幾分登場します。(現代金融論の中では必ず登場しますものね。)
- 作者: スコット・パタースン,永峯 涼
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/08/28
- メディア: 単行本
- 購入: 24人 クリック: 295回
- この商品を含むブログ (26件) を見る
それに、ちょいと触発?を受け、以前に受講したOR学会主催のセミナーの復習を兼ねて、
Excelを利用して、ポートフォリオの最適化をやってみたいと思います。
テキストは、以下の「Excelで学ぶOR」を利用します。(第7章 不確実性下の意思決定を参照)
- 作者: 藤澤克樹,後藤順哉,安井雄一郎
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2011/07/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 5回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
まずは、簡単な例からやってみたいと思います。(基本的にテキストの内容をトレースする形で進めます。)
例えば、以下の3つの銘柄があった場合、どれくらいずつ投資すると良いか?といった問題があるとします。
銘柄 | 冷夏 | 平年並み | 猛暑 | 期待値 |
1. Aビール社 | -10 | -3 | 6 | 2 |
2. Bエネジー社 | 6 | 3 | 1 | 5 |
3. Cガス社 | 10 | 15 | -10 | -1 |
確率 | 1/3 | 1/3 | 1/3 |
# 各数値は、各社のあるシナリオ(冷夏等)に対するリターンを指します。
また、確率は、各シナリオが発生する確率を指します。
この時、必須となる条件は、確実に、各銘柄への投資配分率を合計すれば、「1」になること。
そして、各銘柄の投資配分率は、「0以上」を満たすとします。
(つまり、空売りはしないと仮定します。)
まず、考え方としては、投資するわけですから、投資リターンは高いほど良いわけです。
投資リターンは、上記の表の「期待値」を使います。
つまり、ここだけの内容で考えれば、期待値(期待収益率)を最大化する問題として定式化されます。
→ 目的関数は、 となります。 正確には、 となります。
Aビール社への投資配分率を とします。以下、同様です。
# 制約条件まで含めた定式化は以下の通りです。
もう少し、よりモデル式らしく記述するならば、ポートフォリオ収益率をとすると、
その期待値 が目的関数となります。
つまり、とは、の期待値というわけです。
ただ、これだけだと、リターン最大化となる組合せは、となってしまい、
結局は、期待値が一番大きかったBエナジー単独の投資となり、ポートフォリオの意味がありません。
もう一つ、重要な考え方があります。リスクをなるべく抑えることです。
ここでのリスクは、「投資収益率のばらつき(分散(標準偏差))」を使います。
つまり、この内容だけを考えれば、期待収益率のばらつきを最小化する問題として定式化されます。
→ 期待収益率のばらつき(ポートフォリオ分散)をとするならば、
となり、
最終的には、 と記述できます。は、分散共分散行列を指します。
さて、最初の問題に戻り、ポートフォリオ分散を最小化する投資配分率を求めてみます。
詳しくは、テキストを参照して頂くとして、Excel上でのやり方は、以下のような表を作成します。
1. Aビール社 | 2. Bエネジー社 | 3. Cガス社 | ポートフォリオ | |
投資配分率 | 0 | 0.5 | 0.5 | 1 |
冷夏 | -10 | -3 | 6 | 1.5 |
平年並み | 6 | 3 | 1 | 2 |
猛暑 | 10 | 15 | -10 | 2.5 |
期待収益率 | 2 | 5 | -1 | 2 |
標準偏差 | 8.641 | 7.483 | 6.683 | 0.500 |
# ポートフォリオ列の投資配分率は、各銘柄の配分率の合計(SUM)を入力。
各シナリオのポートフォリオ列は、投資配分率とシナリオの積の和(SUMPRODUCT)を入力。
期待収益率と標準偏差は、各シナリオに対するポートフォリオのリターンの平均(AVERAGE)と
標準偏差(STDEV)を入力。
そして、Excelのソルバー機能を利用して、最適化問題を解きます。
こちらも、詳細はテキストを参照して頂くとして、
・目的セルは、ポートフォリオの標準偏差のセルを指定し、目的値は「最小値」とする。
・変数セルは、投資配分率のセルを指定し、制約条件欄に、ポートフォリオの投資配分率合計=1と設定する。
・最後に、解決方法を指定し、解決ボタンをクリックする。
ポートフォリオ分散が最小化される投資配分率は、(0, 0.472, 0.528)となりました。
今回は、非常に簡単な3銘柄の場合で最適値問題をExcelで解きましたが、もう少し増やしても大丈夫です。..と言って良いのか、変数は、500個が限度のようですね。
次回は、上記の続きでマーコヴィッツの平均・分散モデルを取り上げていきたいと思います。
(次回もExcelを利用します。)
参考
今回の記事での表は、以下の記事を参考にさせて頂きました。こんな便利なものをあるのですね!