データとエンジニアリングのよもやま話

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No.33 What is "DARK POOLS" ?

最近、また金融への関心が芽生え、幾つか金融系の本を読んでいる。
今回は、そのうちの一冊を取り上げ、ちょっとだけ深堀したい。

取り上げる書籍は以下の作品です。

ウォール街のアルゴリズム戦争

ウォール街のアルゴリズム戦争

実は、金融というよりは、「アルゴリズム」というタイトルに惹かれ、
手に取っただけなのだが..笑

タイトルには、アルゴリズムと書かれていますが、いわゆるアルゴリズムトレードに主軸を置いたものではなく、原題にあるように「Dark Pools」(ダークプール)について、それが生まれる歴史的な背景や一人のプログラマの活躍に主にフォーカスして書かれた作品。
なので、アルゴリズムトレードものと思って本作品を読むと幾分期待外れに感じるかも。

原題の「DARK POOLS The Rise of the Machine Traders and the Rigging of the U.S. Stock Market」とあるように、そのまま「ダークプール マシントレーダーの台頭と米国株式市場における不正操作」と訳すれば良かったのに、、と個人的に感じる。
そういう意味でも、今度、原文のほうを読んでみたい。


ところで、ダークプールとは何ぞや??だが、
www.investopedia.com

上記の通り、(取引所を介さない)私設取引の場を意味する。
つまり、日本で言えば、東京証券取引所などの取引所を介さないというわけだ。

詳しくは、以下の記事の冒頭を読むと分かりやすいはず。

gendai.ismedia.jp

↑記事は、2016年のものなので、金融業界のなかではホットなトピックと思しき。


では、そういう取引所を介さないダークプールの何が問題なのかといえば、価格形成の不透明性にあるとのこと。
気配値の情報は公開されておらず、どのように運営されているかも一般には公開されていない。(そういう不透明さがあるからこそ、「ダーク」という形容詞がついている)

jp.reuters.com

また、実は、(特に米国では) 様々なダークプールが運営され、市場の過度な分裂が発生していること、それに伴う市場の歪みがHFT*1に更なる収益獲得の機会を与えることになり、議論を呼んでいるとのこと。(本書 P502より参照)

現状のダークプールの姿については、以下の記事が詳しいと思われる。

www.dummies.com

以下、気になった点を一部引用している。

DARK POOLS ARE MORE AND MORE PREVALENT
In the United States alone, estimates suggest that 40 per cent of all executed trades are completed in a dark pool, and about 20 per cent in Europe.
(ダークプールは、ますます勢いづいている。米国単独では、全取引の40%はダークプールと推測されている。同様に、ヨーロッパでは20%と推測されている。)

DARK POOLS HAVE GROWN BECAUSE OF HFT
Institutions now had an even stronger need to avoid what they felt was the predatory trading of high frequency traders as the HFT crowd tried to sniff out large orders in the displayed markets.
(ダークプールは、HFTの存在のために成長が続いている。機関投資家は、可視化されている市場[つまり、既存の取引所]での大型注文を嗅ぎまわる高頻度取引者という捕食者を強く避けたいと思っている。)

DARK POOLS ALLOW FRONT RUNNING
Front running isn’t fair and is banned, but unfortunately front running still happens in dark pools.
(ダークプールでは、フロントランニング[取引の先回り]が可能。フロントランニングは、公平ではなく禁止事項だが、残念ながら、フロントランニングがダークプールで横行している。)

今後も、ダークプールが大きくなってくることは容易に想像できる。
ただ、メリット*2だけではなく、大きな課題が残ったままの状態となっている。

本書に描かれている天才プログラマのジョシュア・レヴィンは、当時の立会による取引所の有様にショックを受け、効率的で安価な手数料で取引ができる電子取引ネットワークを開発してきたとあったが、後世に、このような形で市場が形成されるとは、夢にも思わなかっただろう。

ダークループについては、折を見て、またウォッチしていきたい。

*1:High Frequency Tradingの略。極短時間内の高頻度取引を意味する。

*2:今回は取り上げていなかったが、例えば、手数料が取引所よりも安価という側面がある。